土地探しは、家づくりにとって最初にして最大の課題と言っても良い大きなイベントです。
これから50年住む、子どもたちは100年住む場所になるかもしれません。
立派で豪華な良い家をつくるより、住む場所というのは一生を左右する大切なものです。
最良の土地を見つけるために、押さえておくべきポイントを一級建築士&
ファイナンシャルプランナーの目線からアドバイスします。
事前準備
失敗を避けるには、以下の3つの事前準備が重要。
①購入条件の優先順位を家族で共有。
さまざまなケースがあるが、まずは、購入条件の優先順位をつけて家族で共有。
100%満足の土地を見つける方は本当に稀なケースです。どこかで不満があり我慢が必要な条件があるはず。
業者を選ぶのと違い、土地は『タイミングがいのち』。待ってれば良い条件の土地が出てくるとも限らないし、悩んでいる間に他の人に取られてまうケースも十分あり得ます。
生活利便性や防災対策等、優先順位を整理し、100点満点でなく、80点の合格点を目指すことが、あなたにとって、最も良い土地を見つけられる秘訣だと言えます。
②本格的に土地の検討をする前に建築業者を3社程度に絞る
(ローンで購入の場合)
現金購入なら特に問題となりませんが、土地もローンで買う場合は、新居を担保とするので、建築業者を決める前ではローンの契約が難しいです。
理想の土地が見つかっても、業者を決めるのに手間取ってしまい、売り主が待ちきれなくなり、ほかの人に先に売ってしまったという事例もよく聞きます。
また、土地が確定していない状況で業者決めるということは、諸条件が確定せず、その会社の具体的な間取り等の提案力、設計力を判断することができないというデメリットがあります。
そのような理由により、事前に建築会社を3社程度に絞ってから、本格的に土地の具体的な検討をすれば、理想の土地を先に売られてしまうリスクを減らして、建築業者の具体的な提案を比較してからの業者決定が可能となります。
また、建築業者を全く絞れていない段階での、門閣的な土地の検討はおすすめできませんが、概ねの相場や候補地を調べることはとても大切ですので、インターネットや不動産会社からの情報収集は行い、建築業者選びと土地選びは並行して行っていくことが重要です。
③概ねの資金計画を組む
土地の条件を優先して、土地を決定してしまうと、高額になりすぎて融資を受けられなかったり、建物にお金をかけられなくなってしまいます。
まずは、世帯年収から、いくらくらいならローンの支払いが可能なのか、いくらまでなら金融機関が貸してくれるかの確認をして、概ねの借入額を確認するのがスタート。
世帯年収ごとの借入可能額と妥当借入額をこちらの記事👇でまとめています。
次に建築業者に概算の建築費用を出してもらい、残りを土地代金とすることで、土地の購入費の限度額を決定します。
当然ですが、良い土地ほど金額も高くなります。高望みをしてしまうと、場合によってはのちのち資金計画で破綻をし、大きな後悔をすることになってしまいます。
土地購入費の概ねの限度額を決めることが、土地選びの第一歩と言えるでしょう。
どうやって探すの?
主な土地探しの手法としては、
①建築業者の紹介
②不動産業者
③インターネット
があげられます。
ハウスメーカーや大きな工務店なら、建築工事を受注するためにも、土地が決まっていなければ、精力的に良い土地を提案してくれます。
建築業者が事前に決まっていれば、業者に任せるのも悪くないのですが、案件も絞られてしまうため、不動産業者にも平行して調べてもらう方が良い土地が見つかる可能性がより上がります。
不動産業者も、手持ちの物件以外も調べてくれますので、条件を伝えて調べてもらえればそれほど多くの手間がかかるわけではありません。
インターネットは、情報量も多く、手軽に自分で調べることができますが、良い物件はネット掲載していない場合も多く、不動産業者等も調べてくれますので、業者にお任せする方法をメインとすることをおススメします。
at home(アットホーム) ⇒一度ご希望地域の相場を確認してみましょう。
1級建築士&FPからみた押さえておくべきポイント13選
①生活利便性
生活利便性は、多くの条件があり、生活する上で最も大切な条件。
学校、病院、スーパー、コンビニ、駅、バス停、金融機関、役所等が対象になりますが、大切な条件でもある反面、我慢もできる条件でもありますので、絶対譲れないものを除いて参考程度に考えるのが土地探しのうまくいく秘訣です。
②防災(ハザードマップ)対策
最近の豪雨災害を考えたときに大変重要な項目です。必ず、候補地のハザードマップを見て、総合的な判断をしてください。
ハザードマップポータルサイト(国土交通省) ⇐各自治体のハザードマップはこちら
ハザードマップはあくまで想定ですので、範囲に入っていないからと言って安心ではありません。山や川の状況を確認して、できれば地域の状況に詳しい方に話を聞いてからの判断も必要です。
また、周辺状況を確認して、その土地が、最も低い場所になっていないかの確認が必要です。大雨の際には、側溝の水が溢れると考えてください。
溢れた場合に水が逃げる場所がない場合は、土地のかさ上げが必要になり、数十万~数百万円余分にお金がかかる可能性もあるのでご注意ください。
③地盤の確認
その土地の地盤の強さは調査が必要。
調査については、土地購入後に購入者が行うのが一般的ですが、調査結果によっては、杭工事等で建築費が数十万円~100万円程度高くなるので、近隣の情報などを不動産業者や建築業者などからヒアリングをして判断をしてください。
東日本大震災の際にも注目された液状化については、都道府県や市町村がハザードマップを公表しているところもありますので、ご確認ください。
液状化の危険があるようなところは、基本的に杭工事をするべきですので、50万円から100万円程度高くなると思った方が無難です。
④どういう道路に接しているか
道路については、一般的に公道に2m以上接している必要があります。公道と言っても認められるものと、認められないものがありますので、建築業者などにしっかりと確認をする必要があります。
また、2項道路と言って道路の中心から2mセットバックをしなければならない土地もありますので、土地の面積に入っていても、建物や構造物を建てられない場所がある場合もありますのでご注意ください。
⑤土地の形状が整っているか
建物の具体的な設計をするときには、形状が大変重要です。理想的には、南側を大きくとれる東西に長い土地になりますが、敷地を活かせるかどうかは、設計者のセンスによるところです。
また、上図のような土地を旗竿敷地と言って、道路から細長い通路状の敷地を通って広くなる敷地があります。これは、通路状の部分も購入しなければならないため、坪単価は安くなりますが、総額は高くなる傾向があります。
また、水道や下水道を引くのに余分にお金がかかる可能性が高いです。
私としては、旗竿敷地は、日常生活のことも踏まえて、よっぽど他の条件が良くないかぎりは避けるべきだと考えます。
⑥用途地域、市街化調整区域
建物を建てる際には、『用途地域』という建物の種類の制限があります。住宅は基本的に制限がありませんが、用途地域によっては、高さの制限や敷地境界線からの壁面の距離の制限等があり、高さ制限によって3階建てが建てられない場合等がありますので、3階建てを建てる予定の場合は特に気を付けてください。
市街化調整区域については、市街から離れた農村地域において、行政の許可がなければ建てられない地域です。許可は、農家の分家などの条件があり、かなり厳しい規定で、もし買うことができても、住宅を建てることができない可能性がありますのでご注意ください。
⑦防火地域、準防火地域
建物が密集している地域は、防火地域や準防火地域に指定されている場合があります。住宅においては、準防火地域はあまり影響はありませんが、防火地域の場合、木造ではかなり規制が高く、難しいため、建築業者が限られる場合もあります。
防火地域の土地を買う場合は、建築業者にしっかりと話をして、要望の住宅が建てられるか確認が必要となります。特に木造では、制限が厳しく、3階建ても難しくなりますので、注意してください。
また、工事費についても、制限が増えるため高くなりますので、その点も考慮して検討してください。
⑧建蔽率、容積率
建蔽率、容積率はよく聞く言葉かと思いますが、土地の面積に対する建物の概ねの1階床面積の割合を『建蔽率』、土地の面積に対する建物の1階と2階を合わせた床面積の割合を『容積率』と言います。
住宅では、ほとんど問題にならないですが、狭小地にぎりぎりで建てる場合は、制限を受ける場合がありますので、設計者と相談しながら検討をしてください。
⑨建物の外観の規制
建物の外観について、地区計画や景観法というもので、規制がされる場合があります。
法律ではなく、地域の取り決めという場合もありますが、思わぬところで、思っていた建物が建てられないことがありますので、こちらも建築業者にご相談ください。
⑩水道や下水道等のインフラ整備
水道や下水道がどのようになっているか確認が必要です。もともと住宅が建っていなかった場合、建築主が水道や下水道を家の前まで通すために、100万円以上かかることもあります。
水道や下水道が家の前まできているかは、確実に確認をするべき事項です。
⑪隣地との境界をはっきりさせること
隣地との境界は、必ずしもはっきりと決まっているわけではありません。土地の大まかな形状と面積を定めた公図を元に、双方の話し合いで、隣地との境界線は決まります。
境界を確定させるのにも測量費で、10万円程度はかかりますので、後々問題にならないように、隣地との境界ははっきりなったものを購入するようにすることが大切です。
⑫生活環境(日当たりと騒音)
生活環境として、注意するのが日当たりと騒音です。
日当たりは、夏場に現地を見て大丈夫ではなく、冬場を想定した検証をしてください。
また、数年後に南側に住宅やマンションが建つ可能性がある土地はできるかぎり避けるべきです。
あとから後悔する良くある例です。周辺環境をしっかりと見定めて、将来を見越した検討が必要です。
騒音は、見落としがちですが、特に夜安眠できるかどうかは大変重要です。環境として我慢できるレベルかどうか、夜中の状況確認も可能ならば是非してください。
⑬建築予定地の市町村や子育て、助成制度の確認
建築予定地の子育て環境が充実しているかを行政のHP等で確認してください。市によって、待機児童の状況も大きく違います。
福祉制度などは、首長(市長村長)が変われば、重点政策も変わりますので、まずは目の前の子育て等の制度を参考にするだけで十分です。
優先順位はそれほど高くする必要はありませんが、参考として調べておくことをおススメします。
まとめ
今回は、建築士&FPの目線から、土地探しの前にするべき事前準備3点と押さえておくべきポイント13選をあげました。
これらのポイントを踏まえながら、100点満点の土地を探すのではなく、80点の土地を目指して、あなたに合った後悔しない土地が見つかりますことを願っています。