日本の木造住宅の本当の寿命【欧米との比較とこれからの取組】

みなさんは、日本の木造住宅の本当の寿命はどのくらいだと思いますか?

新築から解体するまでの日本の住宅の平均寿命は約30年といわれ、米国の55年、英国の77年と比べて、日本の寿命が極端に短くなっています。

では、日本の住宅は30年しか持たないのでしょうか?
いや、それはありえませんね。昔ながらの立派な家がたくさん残っています。30年以上でも立派な家として残っているのは、しっかりとした点検と修繕をしてきたからだといえます。

これからの日本は、いままでのスクラップアンドビルドの時代と違い、欧米のように、住宅を長持ちさせ、中古住宅でも価値が下がらない住宅が求められてきます。

本記事では、日本の新築住宅の8割を占める木造住宅の本当の寿命を追っていきたいと思います。

建物の法定耐用年数は

国税庁は、以下のように法定耐用年数を定めています。

木造・・・・・・・・22年
軽量鉄骨造・・・・・19年(3mm以下の場合)、27年(3mm超4mm以下の場合)
重量鉄骨造・・・・・34年(4mm超)
鉄筋コンクリート造・47年

※鉄骨造の3mm及び4mmは鉄骨の厚みのこと

木造住宅の中古市場では、よく築20年になれば建物の価値はほとんどなくなると言われるのは、これが主な要因です。

この法定耐用年数というのは、企業などが税金の控除をする際に、減価償却費を算出するために使うものですので、実際の寿命ではありません。

固定資産税評価額

『あれ!?うちは築30年なのに固定資産税の評価額が残っているよ。』

という疑問になる方もいらっしゃると思います。

実は、企業の税金控除の減価償却と一戸建て住宅の固定資産税評価額の減価償却は考え方が違うのです。

一戸建て住宅の固定資産税評価額は、1月1日時点の、再建築価格から経年損耗原価を差し引いて算出します。

再建築価格・・・・その家屋を新築したと想定した価格。新築購入価格の約5割~7割。

経年損耗原価・・・再建築価格に経年原価補正率を乗じたもの

経年原価補正率・・1年目の0.6から徐々に減り、27年目以降は0.2で一定。
(参考)東京都の経年原価補正率(都道府県ごとに違います)

例えば、

2000万円の新築住宅を建て、再建築価格を購入価格の5割とした場合の30年後の固定資産税評価額は、

2000万円×0.5×0.2

200万円 です。

新築購入価格の1割から2割は固定資産税評価額はず~っと残るということです。

日本の住宅の平均寿命が短い理由

理由はさまざまありますが、大きな要因として以下の3点+αがあげられます。

①地震が多く、法律が何度も改正されているため

ご存知の通り、地震大国日本です。建築基準法では、特に1981年の改正が大きく、1981年以前の建物については、建替えや耐震補強が推奨されています。

1981年以降も大きな地震が起きるごとに日本のどこでも地震が起きてもおかしくないという危機感を日本人は感じてきました。

耐震補強をするより、新築した方が明らかに安全ですので、どうせ改修するなら建替えてしまうという意識が働いたことが、建替えが進んだ大きな要因だと思います。

②時代背景と日本の風土

高度経済成長を支えた重要な産業のひとつに住宅産業、建設産業があります。スクラップ・アンド・ビルドという言葉がつくられ、建物の更新が急速に進められたことも大きな要因です。

また、日本の気候は、四季があり温暖湿潤の気候ということから、劣化が激しく、定期的な点検をして直していけば良いのですが、被害が表に出るまでわからないことがほとんどです。

日本が裕福の時代を経験してきたからこそ、直すお金をかけるならならいっそのこと建替えようという発想につながったと考えられます。

③中古市場が活発ではないため

そもそも、日本の中古市場が活発ではありません。

国土交通省が上図のように既存住宅取引数の割合を算出しています。

日本と海外の価値観の違いからか、中古住宅の取引量は海外と比べて明らかに少なくなっています。

環境問題や空き家問題など、これからの社会考えれば、中古住宅の流通が盛んでないないことは日本の住宅産業において最大の課題です

中古住宅の流通が活発な社会になっていけば、自然と住宅の平均寿命も延びると考えられます。

+α(その他要因)

・木造住宅が8割を占めるため。欧州は石造やレンガ造が多いため。
※3匹のこぶたの一番強い建物はレンガ造です。
・建築会社の陰謀説(あえて粗悪な建物を建ててきたという説 絶対にありえませんが・・)
・日本の技術開発が進み、魅力的な新しい技術が続々と発表されるため。

などさまざまな要因が混ざり合い、総合的に日本の住宅の平均寿命が短くなったと考えられます。

日本の住宅の平均寿命は延びている

早稲田大学の小松幸夫教授の研究によると、木造専用住宅の平均寿命は以下のように算出されています。

木造専用住宅の平均寿命
1997年調査 2006年調査 2011年調査
43.53年 54.00年 65.03年

出典:論文「建物の平均寿命実態調査」(2013年1月)早稲田大学小松幸夫

一般に言われている平均寿命よりかなり長いということが言えます。調査手法により変わる部分も多いため、単純比較はできませんが、年々建物の寿命が延びていることは確かです。

今後もこの傾向は続くと思いますので、国としても、さまざまな対策も必要になってくるでしょう。

日本の現在の取組

日本の住宅は、スクラップアンドビルドを繰り返してきたことから、今後は、環境に配慮した、地震に強く、長く快適な住宅を長期優良住宅やZEHの推進をしています。

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また、空き家問題が大きな行政課題となり、国や行政も本腰を入れて取り組むようになってきています。

空き家を流通させることで、建物を長持ちさせ住宅の平均寿命を延ばすことにもつながります。

ただし、20代、30代の人口が減っているのにも関わらず、下図のとおり新築着工統計は減っていません

住宅着工統計(国土交通省)より作成

平成21年には、リーマンショックにより28%の減と大幅に新築着工数が減っていますが、その後は回復傾向にあり、予想に反して増加しています。

ただ、現在のコロナウィルスによる世界経済の打撃はリーマンショックを軽く超えるとされ、全く先行きが不透明な状況で、住宅産業についても、かなりの冷え込みが予想されます。

今後は、中古住宅やローコスト住宅、リフォーム事業がさらに注目されるものと思われます。

国としても、景気の動向を見ながらリフォーム事業のさらなる充実が勧められていくのではないでしょうか。

日本の木造住宅の本当の寿命は?

では、本題である、木造住宅の本当の寿命ですが・・・

残念ながら何年という定義はありません。

ただ、『現在の日本の木造住宅は本当の寿命で壊していない。』

というのはたしかです。

今後は、建物の点検をしっかりとして、長持ちさせることが重要です。

国は、長期優良住宅を創設する際に、200年持たせる住宅を目指していました。しかし、さすがに200年は無謀です。

日本の気候と人が住んで生活をしなければならないことを考えれば、住宅は、100年程度が限界でしょう。

人生100年時代を迎えようとしている現在、住宅100年時代を目指して、住む人の定期的な点検の責務をもって取り組んでいくことが必要です。

まとめ

木造住宅の減価償却の法定耐用年数は、『22年』です。

中古住宅市場においても、一般的に20年程度で、住宅の価値はほぼ『0』とされてしまいます。

しかし、固定資産税評価額は、築27年まで、減っていったあとは、解体するまで一定の評価額は残り、価値としてなくなるわけではありません。

さまざまな要因により、日本の住宅は、30年程度で建て替えられていますが、環境保全や社会情勢からも、今後は定期点検を行い、住宅100年時代をすすめていくことが必要です。

ぜひ、住宅取得後は、住宅所有者の責務として、長持ちする快適な住宅を維持するようにしていただければと思います。

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