坪単価に惑わされるな!建物本体以外にこんなに必要

家づくりにおいて、将来を幸せな暮らしをしていくために最も重要なもの、それは

『資金計画』

です。

家を建てるには、何にどれくらいの費用がかかるのか。そして、家を維持していくには、どれだけ必要か。
すべての費用を理解し、トータルコストを考えながら資金計画をたてて、家づくりを進めることが大切です。

『資金計画』を立てる上で、大事な指標となるのが、『坪単価』になります。

これは、建物の1坪(3.3㎡)当たりの金額で、安いところで坪30万円、高いところで坪100万円程度。

例えば、坪60万円で40坪の家を建てたとすると、2400万円となります。

住宅会社を比べたり、概ねの建物費用が簡単にわかる便利な『坪単価』。

実は、この坪単価を理解しないで家づくりを進めると、大きな落とし穴にはまってしまいます。

坪単価、そして家づくりに関わる費用をしっかりと理解して、資金計画を立てていきましょう。

家づくりに関わる費用

まずは、家づくりにはどんな費用があるのかまとめました。

注文住宅を建てる上で、必要になる費用は、大きく分けて以下の4項目+αです。

①土地購入費
②建物本体工事費+設計料
③付帯工事費
④諸費用

これに加えて将来的に家にかかる費用
⑤維持管理費

では、それぞれ詳しくみていきましょう。

①土地購入費

土地に関わる費用です。土地をもともと持っていたり、親族の土地に建てる場合は不要になります。

土地購入の注意ポイントの記事はこちら👇
⇨⇨⇨失敗しない土地探し|建築士の『ここだけは』ポイント教えます

②建物本体工事+設計料

建物本体工事は、建物そのもの工事のことで、基本的な考え方としては、建物内における、躯体(基礎、柱、梁、壁、床)と躯体に直接取り付けられる工事(電気、水道、仕上げ)になります。

主な工事は以下のとおりです。

※目安金額は、木造軸組工法の40坪、2階建て程度を想定

建築本体工事+設計料
工事種類 概要 目安金額
仮設工事 足場や工事の準備 30~100万円
基礎工事 コンクリート基礎 50~120万円
木工事 大工関係の工事、材木 500~800万円
屋根工事 瓦屋根 50~100万円
板金工事 樋等の工事 10~30万円
外壁工事 外壁の仕上げ工事 100~200万円
防水工事 バルコニーの防水 10~30万円
塗装工事 外壁の一部等塗装仕上げ 10~50万円
金属建具工事 サッシ、玄関扉 100~200万円
タイル工事 玄関回りのタイル等 10~30万円
内装工事 クロス、フローリング 30~100万円
木建具工事 室内扉 50~100万円
雑工事 防蟻、コーキング、断熱材等 20~50万円
電気工事 宅内の電気配線等 50~100万円
住宅設備工事 キッチン、風呂、トイレ 100~300万円
給排水工事 水道関係の配管 30~100万円
ガス工事 ガス給湯器、配管 20~50万円
諸費用 運搬、管理費 50~150万円
設計料 設計費、申請料、監理費 50~100万円

目安金額については、業者による考え方の違いや仕様により大きく変わるため、あくまで目安として考えて下さい。

③付帯工事費

付帯工事費は、建物本体工事には含まれない工事の金額です。

主な工事は以下のとおりです。

付帯工事
工事種類 概要 目安金額
解体工事 既存建物の解体工事 50~200万円
造成工事 敷地造成 50~200万円
仮設工事 仮設トイレなど 30~50万円
地盤補強工事 地盤改良、杭 30~200万円
照明器具工事 照明設備の工事 30~50万円
カーテン工事 カーテン、ブラインド 10~50万円
電気引込工事 電柱からの引き込み 10~50万円
水道引込工事 水道本管からの引き込み 20~50万円
下水工事 下水道本管、浄化槽 20~50万円
太陽光工事 太陽光発電設備 100~500万円
外構工事 外構、庭、造園 50~200万円

④諸費用

建物以外にかかる費用です。主なものは以下のとおりです。

諸費用
費用名 概要 目安金額
印紙代 契約書印紙税 1~10万円
不動産取得税 取得における税金 0~10万円
登記費用 手続き料、登録免許栄 5~30万円
ローン諸費用 手数料、保証料 50~100万円
つなぎ融資 手数料 0~20万円
損害保険 火災・地震保険 0~20万円
負担金 水道負担金等 0~20万円
仮住まい費用 アパート代など 状況次第
引越し費用 引越し費用 0~100万円
式典費用 地鎮祭、建前、餅投げ 1~30万円
差入れ費用 職人さんへ手土産 数万円
挨拶廻り 近隣への挨拶手土産 数万円
回線費用 電話、インターネット 2~5万円
家具 テーブル、椅子、ソファ 30~100万円
家電 冷蔵庫、洗濯機、TV 50~100万円

⑤維持管理費

生活していく上で、住宅に関する必要な費用です。

家づくりをするには、将来的な費用も考えて、住宅ローンなどの資金計画をつくる必要があります。

維持管理費
費用名 概要 目安金額(年額)
修繕積立 10年後の修繕積立 5~20万円
光熱水費 電気、ガス、水道 10~50万円
回線使用料 電話、インターネット 1万円
損害保険 火災、地震保険 0~10万円
家具、家電 家具、家電の買換え 0~20万円
固定資産税 土地、建物の税金 10~50万円

坪単価の真実!その計算方法は

では、次に坪単価の算出方法を考えていきましょう。

坪単価の計算方法とは、

『建物本体工事』 ÷ (『床面積』/3.3㎡)

です。3.3㎡は1坪≒3.3㎡のため、坪当たり換算するためです。

この、『建物本体工事』と『床面積』が曲者です。

住宅会社によって違う算出方法が違う建物本体工事

『建物本体工事』の主な工事の例を上げましたが、これは法律で決まっているわけではないので、住宅会社によって、『建物本体工事』と『付帯工事』のどちらに入れるかが違います。

先ほど示した『付帯工事(解体費と造成費を除く)』を全て含んで坪単価として算出する業者もあれば、建物本体工事に入っている設計料や足場工事まで除いて坪単価を算出する業者もあります。

算出方法だけで、20万円~30万円の差がでる場合もあります。建築会社から言われた坪単価では、建築会社選びを工事費で比較することはできませんので、特に通いをしてください。

延床面積と施工床面積

床面積には、以下の2種類があります。

①延床面積

建築基準法で定めている床面積です。外壁に囲まれた部分で床がある部分の面積になり、吹き抜け部分やバルコニーなどは含まれません。ただし、階段はすべての階に含まれます。

また、天井高さ1.4m以下の空間(小屋裏)は階数とみなされないため、延べ床面積からものぞかれます。

②施工床面積

実際に施工するすべての面積で、バルコニーや玄関ポーチ、吹き抜け、小屋裏、ロフトなどを含めた床面積です。

2つの床面積に注意

一般的に坪単価というと、法定で決められた延べ床面積で割ったものになります。しかし、延べ床面積では、バルコニーや小屋裏などが大きかったりすると坪単価が高くなってしまい、実態と大きな差がうまれてしまう可能性があります。

建築会社の比較をしたい場合は、施工床面積での比較の方が、正しい比較ができると言えますが、一般的には延べ床面積で算出されていることが多いですので、どちらで算出されているのか必ず確認してください。

大手ハウスメーカーの基準坪単価の考え方

大手ハウスメーカーは、基本的に工場生産であり、商品ごとに基準坪単価を設けて計算します。

標準仕様の建物を建てたときの建物本体価格の基準坪単価を定めていて、それを坪単価しています。

そこから、グレードアップやオプションで付けたものを追加していき見積もりを出していくという考えになります。

分かりやすくて良いのですが、工務店と比べる際には、基準坪単価だけで比較してしまうと、後で痛い目に合う可能性がありますので十分注意してください。

住宅ローンに含められる工事と含められない工事

資金計画を立てるということは、住宅ローンを組むこととほぼ同じです。

住宅ローンには、含められる工事と含められない工事があります。

基本的には、上記の『建物本体工事+設計料』と『付帯工事』が住宅ローンに含められる工事になります。

ただし、外構工事を建物と別の業者へ発注した場合は基本的に住宅ローンに含められない可能性が高いですので、金融機関に確認してください。

建物本体工事以外の費用の割合

建物の全費用のグラフにすると以下のようになります。

一般的な例として、全体予算の7割が建物本体工事、2割が付帯工事、1割が諸費用となります。ただし、解体費用や地盤補強工事、敷地の状況で大きく変動する場合があります。

例えば、建物の全体予算を3000万円とすると

建物本体工事 ⇨ 2100万円(税込み)⇨1900万円(税抜き)

35坪(115㎡)の住宅を建てるとすると

1900万円/35坪=54.2万円

概ね、坪単価は『55万円程度』を目安に考えると良いと思います。

ただし、坪単価は、前章で説明した建物本体工事の場合の目安になりますので、坪単価にカーテン工事や引込工事等が入っていれば60万円代も可能ですのでご注意ください。

また、全体予算を建坪で割ると、

3000万円/35坪=85.7万円

になります。

坪単価から逆算すると、

85.7万円/54.2万円=1.58

より、建物全体には、建築会社が出している坪単価(税抜き)の

1.6倍程度の資金が必要

ということになります。

家づくり全体を踏まえた資金計画を

家づくり全体に関わる費用は

『土地購入費』+『建物の全費用』+『維持管理費』

です。

資金計画を立てる上では、土地購入費にどれくらいの費用が必要か、将来的に維持管理費がかかることが必要です。

それを踏まえた上で、建物の費用(坪単価)をどの程度にするのかを決定するようにしてください。

まとめ

私がこの記事で伝えたい家づくりの注意ポイントは以下の3点です。

①坪単価は、建築業者によって算出方法が違う。

坪単価に含まれる工事と含まれない工事があることと、2種類の床面積を理解しましょう。

②建物費用には、坪単価(税抜き)の1.6倍程度の資金が必要。

一般的に言われる坪単価以外に建物費用だけでも多くの費用がかかります。概ね坪単価の1.6倍程度の資金を用意しましょう。

③資金計画は、建物費用に、土地購入費と維持管理費を踏まえること。

土地購入費だけでなく、建物には将来的な維持管理費も必要です。無理のない返済計画をたてましょう。

以上です。

是非、幸せなくらしのためにも、無理のない資金計画を立てて、建築会社選びに役立てていただければ幸いです。

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