現代の生活において、絶対になくてはならないもの。それは
『電気』
です。
近年の災害で最も多くの被害を出しているのが、台風の強風による停電の被害です。2018年の台風では、私も4日間の停電生活を余儀なくされました。
電気がなければ、どれだけ大変なのか、身をもって感じました。
そんなときにたよりになるのが、
『蓄電池』
です。
2009年11月にスタートした太陽光発電の固定価格買取制度が10年目を迎え、10年前に太陽光発電を設置した人たちにとって、40円以上で買い取ってくれていた電気が、10円前後に下がってしまうことからも、蓄電池の導入を検討される方が増えています。
また、2020年の太陽光発電の売電価格が低下や諸条件により、新築住宅で蓄電池を設置する人も増えてくることも予想されます。
2020年の太陽戸発電についてはこちら
では、この『蓄電池』の収支について、計算例を使いながら考えていきたいと思います。
地球環境における蓄電池の必要性
大手電力会社の電気は、つくった電気を貯めておけないことをご存知ですか?
電力会社は、大きい蓄電池は所有しておらず、現在使っている管内の電気量を計算して、調整がしやすく発電単価が高い火力発電など(ピーク電源)でその時点に適した発電量を賄っています。(下図参照)
そのため、いくら太陽光発電が増えたとしても夜や雨天では発電できず、火力発電などに頼るしかないのです。
(参考)2017年4月30日の九州の電力需要実績
九州では、太陽光発電の出力制限を行い、電気を買い取ってくれないことがあります。これは、原子力発電などが稼働していることなどにより、電気が余ってしまうためです。
もし、蓄電池を設置して、電気を貯めておくことができれば、せっかく太陽がつくった電気を捨てることがなくなります。そうすれば、特にCO2を多く発生させる火力発電を減らすことができるのです。
各家庭の蓄電池化が進めば、地球温暖化抑制にも大きくつながると言えます。
蓄電池の価格
今後蓄電池が急速に導入され、蓄電池価格の低下も期待さています。
経済産業省では、2017年に算出したデータより、2020年度の設置価格を1kW当たり9万円の目標としています。(下図参照)
上記価格は、設備費のため、工事費が入っていません。この金額に概ね20万円から30万円程度の工事費が必要です。
5kWの蓄電池を2020年度の目標価格で設置する場合、
5kW×9万円+30万円
=75万円
程度となります。
蓄電池のメリット・デメリット
メリット
蓄電池の主なメリットは以下の3点です。
①地球温暖化抑制につながる
前述したとおり、再生可能エネルギーの使用が増え、地球温暖化抑制につながります。
②停電時に大活躍する(太陽光発電を設置している場合)
太陽光発電だけでは、夜の電力は賄うことはできません。特に冷凍庫は夜間に中身が解けてしまいます。
また、太陽光発電のみでは、200VのIHやエコキュートには使えない場合があります。200V対応の蓄電池を導入すれば停電時にも何不自由なく生活ができることとなります。
③安い夜間電力が活用できて、電気代が下がる
料金プランや太陽光発電の売電価格によりますが、最も安い時間に電気を買って、高い時間に使うことでコストメリットがあります。
デメリット
次に主なデメリット3点です。
①導入するコストが高い
蓄電池の価格も下がってきていますが、導入には、数十万~100万円以上の投資が必要です。太陽光発電と違って、蓄電池は導入コストを将来的な収益で全て賄うことは難しいです。
国や自治体の助成金もありますので、メリットを踏まえながらのコスト比較が必要です。
②設置スペースが必要
商品によって大きさは違いますが、概ね高さ1m、幅50cm、奥行き30cm程度の大きさは必要になります。設置場所は屋外の場合が多いです。
太陽光のパワコンと一体型も発売されてきていますので、今後さらに小型化や効率化は進んでいくと考えられます。
③経年劣化があり、10年程度で買換えが必要
何年で買換えが必要かは、場合によって違いますが、概ね10年程度で交換する必要が出てきます。メーカー保証も概ね10年です。
蓄電の容量も、携帯電話と同じように、長く使用すれば容量が減ってきますし、細かい部品の劣化も進みます。
メリット・デメリットまとめ
蓄電池にはメリットが多く、是非検討するべきものです。デメリットとしては、やはりコストがかなりかかることです。
経済産業省も、蓄電池は利益のために導入するものではなく、15年程度で元を取れるような考え方で補助金などの設定をしています。
ただし、蓄電池は15年持つかというとかなり不透明ですので、収支としては赤字になるのを覚悟の上で、地球環境のためや災害時のために導入するか検討してください。
蓄電池の収支計算例
蓄電池は、初期投資の回収は難しいと言っても、ランニングとしては、お得です。
導入を検討するには、どれくらいの収入があるかも気になるところです。
ここでは、いくつかのケースに分けて、概ねの収入を計算したいと思います。
(注意)初期投資などの支出については、考慮していません。
計算ケース
ケース① 太陽光発電を設置し10年経過している場合
ケース② 新築住宅で、太陽光発電が10kW未満の場合
ケース③ 新築住宅で、太陽光発電が10kW以上の場合
ケース④ 新築住宅で、太陽光発電を設置しない場合
計算条件
①蓄電池容量:5kW
②使用年数:10年
③通常電気代:27円/kW
④夜間電気代:16円/kW
⑤卒FIT後の買取価格:10円/kW(👇を参照)
(注意)料金プランは、電力会社や契約時期によって大きく違います。上記電気代は現行の中部電力のスマートライフプランを参考にしています。
※大手電力会社のALL電化プランは⇨⇨こちら
(参考)卒FIT後の買取価格一覧
資源エネルギー庁が、卒FIT後の各会社の買取価格を下記のとおりまとめています。
出典:資源エネルギー庁
計算の考え方
①蓄電池の電気は、電力会社からの購入価格と太陽光発電の売電価格を比較して最も利益がでる時間帯で貯める
②蓄電池の電気は通常電気代27円/kW時(17時~21時頃)に毎日全量の5kWを使用するものとする。
ケース① 太陽光発電を設置し10年経過している場合
市場の売電価格は、現在の状況から「10円/kW」と仮定する
「10円/kW」で電気を買って、通常電気代「27円/kW」で電気を使用すると仮定すると、「17円/kW」が利益になります。
これより、毎日5kW使用すると仮定すると、10年間で
(蓄電池による収入)
=17円/kW × 5kW ×365日 × 10年間
=310,250円
ただし、毎日5kWの電気を発電し通常時間帯に使用すると仮定しているが、実際は雨で発電できない日もあり、5kW使用しない日もあるため、収入は、この70%~80%程度すると
20万円から25万円
程度になると考えられます。
ケース② 新築住宅で、太陽光発電が10kW未満の場合
今年度の売電価格は、「21円/kW」なので、夜間電力を買った方が安いため、夜間電気代「16円/kW」と通常電気代「27円/kW」の差額「9円/kW」が利益になる。
ケース①と同様に毎日5kW使用すると
(蓄電池による収入)
=9円/kW × 5kW × 365日 × 10年間
=164,250円
毎日は5kW全量使わないとすると、収入は
10万円から15万円
程度と考えられます。
ただし、夜間電力が安ければ、その分さらにコストメリットがでてきますので、電力会社の料金を確認してください。
ケース③ 新築住宅で、太陽光発電が10kW以上の場合
今年度の10kW以上の買取価格は、「14.3円(税込)」なので、夜間電力より10%程度安くなります。
太陽光発電分を蓄電する場合、雨の日は十分に貯められないというリスクがあります。10%程度の価格差ならば、10kW以上の場合も、夜間電力で貯めた方がお得になると考えられます。(今後AIの進歩により天気予報から日によって判断することも調整も可能かもしれませんが)
夜間電力で蓄電するならば、10kW未満の場合と同じ収入になります。
ケース④ 新築住宅で、太陽光発電を設置しない場合
蓄電池を導入する際には、夜間電力が安くなる料金プランとしなければ収入的なメリットはありません。
電力会社によっては、夜間電力があまり安くなく
それらのことから、新築住宅で太陽光発電を設置しない場合は、蓄電池による収入はないと言えます。
太陽光発電を設置しないで蓄電池を導入するのは停電時もメリットを活かすことができず、温暖化対策としても太陽光発電の効果が高いため、おすすめはできません
5kW以上の場合
1日に使用する電力は限界があり、料金プランによりますが蓄電池の容量が多いほど使いきれない日も多くなります。
そのため、容量が増えても、収入的なメリットは減る可能性が高いです。
5kW以上の利益については、料金プランと生活スタイルに大きく左右されますので、個別でしっかりとした検証をしてください。
蓄電池導入に対する補助金
蓄電池導入には、国と自治体による補助金があります。
国の補助金については、2019年度の補助金として、6月30日まで申請受付をしています。
条件として、『10kW未満の太陽光発電を併用設置すること』となっていますので前章の4つのケースでは、②のみが対象となります。
その他、各都道府県や市町村で補助金を出していることろもありますので、ご確認ください。
まとめ
蓄電池によるケースごとの収支の一覧がこちらです。
例 | 収入相当(5kW) | 国の補助 | |
ケース① | 卒FIT後の住宅 | 20~25万円 | × |
ケース② | 新築10kW未満 | 10~15万円 ※1 |
〇 |
ケース③ | 新築10kW未満 | × | |
ケース④ | 新築太陽光なし | なし | × |
※1 夜間電気料金を「16円/kW」と仮定しているため、安ければその分収入相当は増える。
大手電力会社の夜間プランは⇨⇨こちらの記事へ
2020年度の5kWの設置費は、概ね75万円が目標値となります。ただし、まだ年度当初であり、そこまで下がるかは不透明です。
国の補助金も2019年度分が6月末までとなっていてその後はわかりませんが、現行では、5kW程度の場合10万円程度の補助金で、都道府県や市町村の補助がほかにあります。
蓄電池の設置をするべきかについては、収支的には、補助金以外に
概ね10万円から20万円の収入がある
として、設置費用とメリットを踏まえながら検討すると良いかと思います。
最後に
蓄電池は、国としては、15年で収支が0になる程度を考えているようですが、試算をするかぎりそれはかなり難しいのではと考えられます。
これから、卒FITの方は一気に増え、売電価格が一気に減ることから、蓄電池を検討される方も増えると思います。
しかし、11円/kW程度以下の夜間電気料金の場合は、太陽光発電の電気を蓄電するより、夜間電力を蓄電した方がお得です。
夜間電力がいくらなのか。雨の日がどれくらいあって、発電量がどのくらいなのか。しっかり検証する必要があり、卒FITを理由にして、蓄電池を導入するべきではありません。
卒FITを理由にするには注意が必要ですが、
蓄電池は今後の地球温暖化対策や災害対策として大変重要な取り組みです。みなさまの資金状況によると思いますが、未来のこどもたちのために積極的な導入を期待します。