こんにちは、日々、子どもたちのストレス発散に使われているhaskyuです。
みなさん、防災対策は完璧ですか?
災害は、いつ起きるかわかりません。国が推奨する、7日分の水と食料の備蓄、そして家具の固定。ぜひ、いつ災害が起きても困らない対策を心掛けましょう。
実は、私は、もともと構造設計が専門でした。大学院は、木造の耐震診断の評価値と地震の震度の関係を研究していましたので、今は実務から離れてますが、災害対策は思い入れが最も強い分野でもあります。
今回は、地震対策の一つである、地震保険が必要か、一級建築士&ファイナンシャルプランナーの視点から考察してみたいと思います。
制度については、こちらで詳しく説明しています。
税金の控除についてはこちらの記事で
建物の構造
構造は、基本的に「木造」、「鉄骨造」、「鉄筋コンクリート造(RC造)」の3つがある。
※組積造とか石造など他にも定義はありますが、日本の住宅で使う可能性はほぼありませんので無視します。
それぞれの特徴としては、
木造の特徴
・他の構造に比べれば安く施工できる。
・施工できる職人(大工)が多く、自由度も高い。
・木の温もりを感じることができる。
・耐震性に関しては、他の構造に比べ不確定な(わからない)部分が多い。
鉄骨造
・木造に比べるとコストがかかる。
・大手ハウスメーカーや建設会社など施工できる会社が限られる。
・建物の構造がはっきりしていて、耐震性に安心感がある。
鉄筋コンクリート造
・最もコストがかかる。
・施工できる会社が限られる。
・施工方法にもよるが耐震性が最も高い。
また、地震保険では、別に次のとおり定義があります。
「イ構造」:鉄骨造、鉄筋コンクリート造、(準)耐火建築物、省令準耐火建築物
「ロ構造」:イ構造以外の建物(木造はほぼこれ)
(準)耐火建築物は、地域によって防火地域というものが定められていて、その地域に建てた場合、建物の大きさや階数に応じて、(準)耐火建築物にしなければなりません。
防火地域でなければ、あえて(準)耐火建築物にすることは、コストの観点からもほぼありえません。
省令準耐火建築物は、ツーバイフォーのハウスメーカー等が、標準仕様で用いているところもありますが、地域の工務店では、標準仕様としているところはほとんどなく、あまり一般的ではありません。
それぞれを確認するには、建築会社に聞くのが一番ですが、引渡しの際にもらった「確認申請書」の第4面【5.耐火建築物等】に(準)耐火建築物、【その他】の欄に省令準耐火の記載があるはずなので、ご確認ください。
保険料は、イ構造の方が安いですが、耐火建築物等にしたとしても、地震に強くなるということは一切ありません。
安いのは、地震を起因とする火災が地震保険での対象であり、火災に強い耐火建築物等のためです。
耐震基準とは
耐震基準(地震に対する強さ)を定めている法律の知識も重要です。
地震の強さについて規定している法律は以下の2つです。
・建築基準法
・住宅の品質確保の促進等に関する法律
建築基準法
この法律は、建物を建てる際に、必ず守らなければならない法律で、第1条でその目的を、国民の生命、財産の保護をするための最低の基準と定めています。
あくまで、法律の定義は、最低の基準であり、想定される大地震がきたときに、倒壊をしない基準として定めていて、半壊程度までは法律も許容しているのです。
よく「新築で法律を守っているんだから、大地震がきても建物はへっちゃらでしょ?」と言う方がいますが、まったく違います。法律を守っても建物の被害を受ける可能性は十分あるのです。
住宅の品質確保の促進等に関する法律
「住宅の品質確保の促進等に関する法律」は、建築基準法を上乗せする基準で、住宅性能表示制度というものを定めています。
この法律は、義務ではなく、「国の基準を満たした品質の高い住宅」を第3者機関が認めて、住宅購入者に安心してもらう制度です。
評価基準として、さまざまな等級や対策が定義されていて、耐震においても3段階の等級が定められています。
前記のとおり、等級により、保険料が割引きされます。イメージとしては、
等級3とは、建築基準法の基準より1.5倍強い家
等級2とは、基準より1.25倍強い家
等級1とは、基準どおりの家
となります。正確には、何をもって1.5倍強いというのか難しいところですが、想定している地震力(加速度)を1.5倍して検討しているということになります。
熊本地震の被害報告
震度7の地震が立て続けに2度も起きた平成28年の熊本地震は、建築構造分野にとってもまさしく想定外だったと言えます。建築基準法は、震度7程度の地震をうけても、倒壊しない規定であり、被害を受けた建物にまた震度7の地震が来ることまでは想定していないのです。
そのような熊本地震において、国土交通省が、研究者からの報告書をまとめています。
⇨⇨⇨熊本地震における建築物被害の原因分析を行う委員会 報告書(国土交通省HP)
建築時期別の木造の被害
法改正が平成12年6月にあり、木造の金物の規定が厳しくなりました。一般的には、新耐震基準とは、昭和56年6月以降かどうかで判断されますが、木造は、平成12年においても大きな区切りとなっているため分けられています。
見てのとおり、平成12年以降は、倒壊の建物は極端に低いながらも、2.2%の建物が倒壊しています。また、約4割の建物がなにかしらの被害を受けました。
(注意)
この被害の程度は、研究者が行っている調査で、地震保険の被害の程度ではありませんが、それなりの相関関係ではあります。
住宅性能表示制度創設(H12.10)以降の木造の被害
等級3の建物では、母数は16棟と少ないですが大破や倒壊は起きていません。しかし、等級3といえども12.5%が軽微な被害を受けています。
等級3をとることは、被害を最大限に抑えることができますが、何があっても100%大丈夫というわけではないということがわかるかと思います。
木造以外の被害
報告書では、鉄骨造で新耐震基準である昭和56年6月以降の建築物で倒壊したのは、地盤や擁壁の崩壊による2棟、隣接建物の衝突2棟、施工不良の建築物、とのことです。
また、鉄筋コンクリートでは、倒壊したものは、なかったとのことです。
木造以外では、構造に起因する大きな被害はなかったといえます。
加入率の推移
付帯率:当該年度に契約した住宅の火災保険に地震保険を付けている割合(共済保険は含まない)
世帯加入率:全世帯に対する地震保険に加入している世帯の割合(共済保険は含まない)
グラフより、年々地震保険を付ける世帯が増えていると言えます。2018年度には、火災保険加入者の65.2%の世帯がつけています。
近年の災害の多さから、防災意識の向上によるものと考えられます。2011年の東日本大震災の際には、顕著に付帯率と加入率が伸びています。
まとめ
地震保険の概要や耐震基準、熊本地震の実被害、加入率と考察をしてみました。
保険料は、耐震性の高い、耐震等級3や鉄骨造、鉄筋コンクリート造の建物等(以下等級3等)は割引を設け、予想される被害の程度に合わせ平等に負担しています。
地震被害を見ると、古い建物の被害が多く、等級3等では被害は一部です。
「新しい建物なら、被害もないし、地震保険はいらないんじゃないの?」と思う方もいると思います。
しかし、実被害からわかるように、等級3等でも被害を受ける可能性は十分にあります。
いま最も心配されている地震が、南海トラフ巨大地震です。政府地震本部によると、今後30年間で起こる確率が80%と予測しています。
地震保険の保険料は、大地震の確率に応じて地域差を設けていますが、日本のどこの地域でも巨大地震が起こる可能性はあります。
また、耐震基準は、倒壊しないことを規定しているだけで、ある程度の被害は許容しています。どんなに建物を強くしたとしても、地盤の崩壊や液状化、隣家からの衝突という可能性も考えられます。
地震による「火災」や「津波」、「土砂崩れ」も地震保険でなければ賄うことができません。
地震保険の付帯率はまだまだ65%と低いですが、新築でどんなに頑強な住宅を建てたとしても、建築士兼ファイナンシャルプランナーとしては、絶対に地震保険はつけるべきと確信しています。
ただし、保険料については、最も高い地域(東京や静岡)で、新築の一般木造の建築費2,000万円、1年契約の場合、建物のみで、3万5千円です。保険料が変わらなければ30年間で105万円です。安いものではありません。等級3をとれば半額近くになりますが、それにもお金がかかります。家計と相談しながら、各家庭に合ったご判断をお願いします。