『施工管理者』と『施工監理者』の違いを知っておこう

建築工事には、監理と管理の2種類があることをご存知ですか?

2つとも『かんり』と読みますが、意味は全く異なります。

住宅などの建物を新築する際には、建物の品質を決める非常に重要なことなのでそれぞれがどういうものなのか是非知っておきましょう。

一般的に、呼び方で分けていて

『管理』 ⇨ 『たけかん』、『くだかん』

『監理』 ⇨ 『さらかん』

と呼んでいます。

日本語自体の意味をデジタル大辞泉を引用すると

『管理』・・・ある基準などから外れないよう、全体を統括すること

『監理』・・・物事を監督、管理すること。

実際の工事現場に合わせて、言い換えれば、

『工事管理者』・・・職人さんに指示を出して現場全体を統括しながら、建物を設計図どおりにつくらせる人。

『工事監理者』・・・設計図どおりに出来上がっているか確認する人

になります。

実は、私も建築学生時代は、理解ができていなく、就職試験のエントリーシートで管理と監理を間違えてしまい、面接の際に指摘されたことをいまでも覚えています。

少し言い訳をすると、当時のハウスメーカーの会社説明資料で間違えていたのをそのまま鵜呑みにして使ってしまいました。それくらい間違えて使っている人もいるということです。

では、実際にどのような仕事なのでしょうか?詳しくみていきましょう。

管理者の仕事とは

工事管理者は一般的に現場監督(以下現場監督と工事管理者は同じ意味)と呼ばれています。請負契約で結ばれた工期と金額で、設計図どおりの工事を実施する役割を担います。

工事の規模に応じて1級建築施工管理技士』若しくは『2級建築施工管理技士』の資格が必要になります。

主な仕事としては、以下の5つの管理(QCDSE)をしていくことになります。

‣品質(Q)・・・職人さんが設計図通りつくっているか管理。

・コスト(C)・・請負契約の金額以内で完成できるように管理。

・工程(D)・・・請負契約の工期内で完成できるように調整。

・安全(S)・・・現場で事故や災害が起こらないように管理。

・環境(E)・・・自然環境、周辺環境、職場環境を守るように管理。

私も現場監督をしていましたが、現場監督は、職人さんに直接指示を出して、指示通りに行われているか毎日確認し、工程や品質等の管理を行っていきます。

その建物のことを最も知っているのが現場監督と言えます。

工事監理者の仕事とは

『工事監理者』(以降監理者)は設計図どおりに工事されているかを確認し、欠陥の発生を未然に防ぐ役割を担います。

建物の規模に応じて、『一級建築士』、『二級建築士』、『木造建築士』の資格が必要になります。

また、工事監理は、建築士法第18条第3項で定義があり、

監理者は、利益も含めて追求する現場監督が、設計図と違った工事をしていた場合、現場監督に是正を求め、修正することになります。

現場監督が職人さんをつかって建物をつくり、それをチェックするのが、監理者です

また、工事後は隠れて見えなくなってしまい後で直すのが困難な、鉄筋工事や断熱工事などは監理者のチェックが、特にきびしい部分です。

設計者が監理者となることが多いですが、設計と施工を同じ会社に発注した場合(住宅ならほとんど同じ)、監理者と現場監督が結託してしまうと、工事監理の意味をなさないため、第3者の企業や機関に工事監理者だけを別で発注するケースも増えています。

それぞれの立場の尊重を

よく言われるのが、「どっちが偉いのか?」という議論ですが、結論としては、どちらというのはありません。

どちらも、建物の品質を確保するために大変重要な責務を担っています。

現場監督もプロといえども、ミスや勘違いも起こります。それをチェックするのが、監理者です。

監理者も現場の全てを隅から隅まで確認できるわけではありません。現場監督を信頼し、何カ所かを抽出した確認になります。

工事管理者と工事監理者が対等の立場で、お互いを尊重し、より良い建物をつくりあげていくことが大切です。

設計・監理

建築現場の工事看板で『設計監理』と書かれているのを見かけますが、これは間違えていることが多いです。

本来は、設計・監理です。設計監理という言葉はありません。

『設計』は設計図を描くこと

『監理』は設計図通り工事ができているか現場で確認すること

です。

まとめ

新築を検討するにあたっては、この工事管理者と工事監理者の違いは理解しておいた方が良いと思います。

ハウスメーカーでは、ほぼ工事監理者はないものと考えても良いです。設計者が、ハウスメーカーの社員のため、設計側からの第3者の目がありません。

さらに検査としても、第三者機関がありますが、大手ハウスメーカーの場合は、型式適合認定をとっているため、検査自体もかなり簡素化されていて、番号を確認するのがメインになります。

工場生産なので、建物自体が製品であり、品質は会社を信頼して、確保されているとの考えに基づいています

それが、ハウスメーカーに対する信頼感、安心感につながっているとも言えます。

品質の良い建物をたててもらうためには、発注している建築会社とは別に工事監理者をお願いするのも一つの手法であす。

これは、建築会社によって、受け入れてくれるところとくれないところがあります。受け入れてくれるところはそれだけ自社製品に自信を持っているということですので、会社の信頼性をはかる意味でも聞いてみても良いと思います。

ただし、監理者を別にお願いするということは、知り合いとかでない限り当然それだけの費用は必要になりますのでご了承ください。

法律的にも、監理の位置づけは設計と同レベルです。

設計者、工事管理者、工事監理者の違いをしっかりと理解し、より品質の良い建物づくりに活かして頂ければと思います。

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