がけの近くに家をたてる際に気を付ける4つの法律

『実家を建替えたいのに建替えられない!』

『やけに安い土地だけどなんでだろう?』

そんなときの最も多い理由が

『がけの規制

です。

近年の大雨により土砂崩れも多く、規制はさらに厳しくなってきています。

では、この崖の規制とは、いったいどんなものでしょうか。

がけの規制にもたくさんある

がけに対する規制は、大きく4つあります。

①がけ条例(各都道府県による条例)

②土砂災害特別警戒区域(土砂災害防止法)

③急傾斜地崩壊危険区域(急傾斜地法)

④宅地造成工事規制区域(宅地造成等規制法)

です。

それぞれが、独立した法律、条例になっているので、どれか一つを満たせば良いというわけでなく、全てを満たす必要があります。

では、それぞれどういうものなのでしょうか。

①がけ条例(各都道府県による条例)

各都道府県が、建築基準条例(東京都の建築安全条例など、都道府県により条例名は違う)を定めていて、その中で、30度を超え、2mを超えるがけがあれば、規制の対象とされているのが一般的です。

なお、北海道など、都道府県では条例を定めず、各市町村の条例や要綱で対応しているところもあります。

愛知県建築基準条例

上図は、愛知県建築基準条例の概念図になります。

崖からの距離2hは、がけ下から2hなのか、がけ上から2hなのか等、運用が自治体によって違います。

建てられるところが無くなってしまう?

条例上は、基本的に2h離さなければいけません。しかし、それでは山間のまちでは、建てるところが無くなってしまいます。

そのため、除外規定として、『安全上支障がない場合はこの限りでない』としています。この基準も自治体によって大きく運用が違いますので、その行政庁に確認をする必要があります。

一般的には、がけ下の場合は、擁壁の対応や2hではなく一定の基準を設けて緩和していたり、がけ上の場合は、杭などで対応可能としていたりする行政庁が多いです。

ちょっとした高低差に注意

数十年前に開発された住宅団地や高台の住宅で、道路と2m以上の高低差がある住宅を良くありますが、過去にしっかりと工事をしたとしていても、がけ条例の対象になります。

その場合、その安全性を証明する必要があり、過去の造成工事について書類が残っていないため、安全性を確認できないということがよくあります。

過去の書類などで安全性を確認できなければ、杭工事などの対応を余儀なくされる場合もあります。

何かあった時に責任は?

行政相談で良く言われるのが、『何かあったら行政が責任を取ってくれるのか?』です。

回答としては、『行政は責任は持てません。施主、設計士の責任のもと判断してください』となります。

本当に何かがあった場合、その都度、その状況によって判断は変わり、行政に責任を求められた場合は、裁判になるものと考えられます。

行政としても、安心安全のためにがけに対する規制をしなければなりません。しかし、規制を強めすぎると家が建てられなかったり、対策に多大な費用がかかったりしてしまいます。

そのため、規制を強める部分と緩める部分のバランスが必要になりますので、ある程度は、設計者と建築主に判断を委ねることとなります。

②土砂災害防止法(土砂災害特別警戒区域)

出典:土砂災害防止法に基づく土砂災害警戒区域等について(国土交通省)

上図でも、色分けがされていますが、土砂災害防止法には、

『土砂災害特別警戒区域(レッドゾーン)』『土砂災害警戒区域(イエローゾーン)』

の2つの警戒区域があります。

平成26年の広島市の土砂災害を受け、指定の見直しが一気に進んでいます。

傾斜が30度以上で、高さが5mを超えている場合は、対策工事の有無に関わらず、警戒区域となり、想定外の地域が警戒区域になったり、建て替えや土地取引の支障になることが増えてきています。

土砂災害特別警戒区域(レッドゾーン)

レッドゾーンに入っている場合は、多くの規制があります。

一戸建て住宅では、木造や鉄骨造で建てることができず、土砂が想定される部分を鉄筋コンクリートで造る必要があります。また、学校や病院など、避難弱者が使う施設は建物自体が建てられません。

建物の基準などは建築基準法告示により定義されています。

住宅の場合、レッドゾーンからの移転に対して補助金も出ますので、レッドゾーンからの移転を考えている場合は、必ずお住まいの市町村にご相談ください。

土砂災害警戒区域(イエローゾーン)

イエローゾーンは、規制は特にありませんが、土砂災害の危険性があるという注意喚起をする区域になります。

土砂災害防止法としての規制はありませんが、がけ条例などの検討は別途必要になりますのでご注意ください。

③急傾斜地法(急傾斜地崩壊危険区域)

がけの近くに土砂崩れの看板が立っているのを見たことがあると思いますが、その多くがこの急傾斜地崩壊危険区域の看板です。

参照:急傾斜地崩壊危険区域の解説(国土交通省)

指定の条件は、②の土砂災害防止法の傾斜30度以上高さ5m以上というものは同じですが、こちらは相当数の居住者(住宅)があることが指定の条件となります。

指定がされれば基本的に都道府県ががけ崩れの対策工事を行ってくれますが、建物を建てる際には許可が必要となります。また、対策工事には居住者負担もあり、全ての区域に対策工事がされるわけではないため、土地探しの際には十分に注意してください。

非常に似た言葉として、『急傾斜地崩壊危険個所』というのがあります。これは、急傾斜地法とは関係なく、都道府県が、地図などから抽出した土砂崩れの危険を示す場所のことを現していますので、急傾斜地崩壊危険区域とは別物になります。

参考:急傾斜地に関する区域の違い(東京都)

④宅地造成等規制法(宅地造成工事規制区域)

宅地造成工事規制区域に指定されている土地で切圡や盛土をする場合は、技術基準に適合した許可が必要となります。

そのため、一般的な住宅の造成費用より多くの費用が必要となります。

指定されている地域はそれほど多くはありませんが、手続きのみでなく、費用に大きく関わりますので、指定されているかどうか、土地選びする際は、不動産会社や市町村に事前確認をすることをおすすめします。

まとめ

4つのがけに関する規制を紹介しましたが、私が自治体で働いていた際に、最も多くの相談があったのがこの『がけの規制』です。

規制の範囲に入っていても、一切建てられないということはありませんが、もしものことを考えれば、購入費が安いとしても新たな土地の購入はおススメしません。

もともと所有してる土地や建て直す実家が規制の範囲内だったということはよくありますので、法律を守りながら、より安全な対策をとるようにしてください。

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