こどもたちの未来のために住宅ができること【ZEH、省エネ】

ZEH(ゼッチ)って聞いたことがありますか?

ZEH:ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス 略してゼッチ

室内環境を良くしてCO2排出量を減らし、太陽光発電などの再生可能エネルギーによりエネルギー(電気)の自家発電で、年間の一次エネルギー消費量※の収支をゼロにする住宅のこと。

※一次エネルギー消費量:断熱材の厚さなどから建築物全体で使われるエネルギーを換算し、算出したもの。詳しくは⇨国土交通省

2009年にスタートした長期優良住宅制度を皮切りにや住宅エコポイント制度、認定低炭素住宅など国としても、環境に配慮した省エネルギー住宅をすすめようとさまざまな施策に取り組んでいます。

そうした中、2014年に閣議決定した「第4次エネルギー基本計画」で2020年に標準的な新築住宅で、2030年までに新築住宅の平均での実現を目指しているのが『ZEH(ゼッチ)』です。

これらを受け、国は2020年までに省エネルギー住宅の適合義務化の予定を公言し、関係機関や民間企業はそれに向けて準備を進めてきました。

しかし、準備が万全でない行政や審査機関、小規模工務店などの反発が大きく、省エネルギー住宅の適合義務化は見送られることとなりました。その代わり、2021年4月から住宅の省エネルギー性能の説明義務化が始まります。⇨⇨⇨説明義務チラシ(国土交通省)

適合義務化が見送られたことは大変残念ですが、今後、省エネ住宅の導入はさらに進んでいくと思います

では、この省エネルギー住宅が私たちに何をもたらせてくれるのか。そして、こどもたちのみらいのために住宅ができることかを考えていきたいと思います。

地球温暖化問題

まずは、住宅を考える前に地球温暖化問題を振り返ってみます。

地球温暖化問題は1997年に京都議定書が採択され、国際的な取組みが大きく進みだしました。しかし、アメリカの脱退や中国やインド等の新興国が対象外など、その実効性については多くの課題も抱えていました。

そうした中、2015年にパリで開かれた「国連気候変動枠組条約締約国会議(COP21)」で、京都議定書の後継となる『パリ協定』の取組が採択され、現在パリ協定の目標に向けて、新興国も含めて主要排出国が取り組んでいます。ただし、アメリカはまたしても離脱を表明しましたが。。。

地球温暖化は、地球の将来のために取り組まなければならない最重要課題であるといえるでしょう。

パリ協定とは

2015年のパリ開催のCOP21で採択され、発効条件である『55か国以上の批准(国が同意すること)』と『世界の温室効果ガス総排出量の55%以上となる国の批准』を満たした、2016年11月に発効されました。

パリ協定の目的は、

世界共通の長期目標として平均気温の上昇をを産業革命以前より2.0℃以下保持し、1.5℃以下に抑える努力を追求する。

その目的を達成するための概要はこちら
⇨⇨⇨パリ協定の概要(環境省)

史上初めて、全196ヵ国が合意した枠組みとなりました。

数値目標は、それぞれの国に委ねられています。現在の取組状況を省エネルギー庁がまとめたものがこちらです。

主要国のGHG削減の進捗状況(省エネルギー庁)

日本はさまざまなところで環境問題に対して海外から叩かれていますが、諸外国に比べて、削減効果がでています。

コロナの影響で経済活動が停止していることによって、期せずして今年の温室効果ガスは世界的に大きな減少が予想されますが、いまのままでは、長期的な達成はかなり厳しい状況です。

地球温暖化は何を引き起こすか

では、地球温暖化が進むとどんな影響があるのでしょうか。

主な影響は次の4つです。

①海面の上昇

氷山や氷河が溶けたり、海水温が上がり体積があがることにより海面が上昇します。このままいくと、最悪のシナリオで2000年ごろに比べ21世紀末までに海面が82cm上がると予想されています。
気候変動に関する政府間パネル(IPCC)「第5次評価報告書」2014年

海面が1m上がれば日本の砂浜の9割が焼失することになり、島国を中心とした世界各国に多大な影響を及ぼします。人が住む場所をなくしたり、砂浜の生態系へ影響も計り知れません。

②動植物への影響

自然の中の動物や植物が、その環境に適応できず絶滅する恐れがあります。

③異常気象の増加

大雨が増えたり、逆に地域によっては雨が減り砂漠化が進む可能性があります。日本でも近年のゲリラ豪雨や台風の頻発は地球温暖化の影響とも言われています。

また、それにより農作物への影響も懸念されています。

④人の健康や活動への影響

熱射病が増えたり、マラリアやコレラ等の感染症の感染率の増加が懸念されています。

日本の取組目標

パリ協定を踏まえ、日本の地球温暖化対策を総合的かつ計画的に推進するための計画として「地球温暖化対策計画」が平成28年5月に閣議決定しました。

計画では、2030年度に2013年度比で26%削減の中期目標2050年までに80%削減を目指す長期的目標を立て、日本の地球温暖化対策をすすめる上での礎となっています。

地球温暖化について、簡単にまとめましたが、どうでしたか?

もっと詳しく知りたい方は、環境省がわかりやすくまとめていますので参考にしてください。
⇨⇨⇨おしえて!地球温暖化(環境省)

地球温暖化と住宅

では、住宅が地球温暖化にどのように関わっているか考えていきたいと思います。

エネルギーを起源とする日本のCO2排出量の部門別の表が以下のとおりです。

一般社団法人地球温暖化防止全国ネット  単位【百万トンCO2】

見て頂いたとおり、住宅にかかわる家庭部門が、業務部門と並び2030年度の排出削減目標が高くなっています。これは、1990年から家電製品の普及等に伴い、CO2排出量がどんどん増えてきたことから、住宅自体や家電製品でのCO2を削減させようと、目標値が高く設定されています。

国の目標である2030年のCO2削減量2013年度比26%を達成するには、私たち国民一人一人が担う役割は非常に高いと言えます。

そして、住宅自体についても、省エネ住宅を普及させることが大変重要になることがわかります。

日本の省エネルギー住宅の制度

日本の省エネルギーに対応した主な住宅制度は、以下の4つです。

①長期優良住宅

2009年にスタートした制度で、強くて快適な住宅を建てて長く使ってもらおうという認定制度です。日本の住宅は30年程度で建替えられてきましたが、解体時の産業廃棄物の処理などにCO2が多く輩出されるなど環境に対しても大きな影響が出ていました。

そうした中、賢く長く使うことで環境に配慮した住宅を認定して、税の控除などを行っています。

省エネルギー性としては、基本的には断熱材や窓の性能を上げることで、室内を冬は暖かく、夏は涼しく保ち冷暖房を減らすことを目的としています。

長期優良住宅については、こちらの記事も是非お読みください。

長期優良住宅のメリットとお得度【年間1000件を審査した経験から】
長期優良住宅にした場合のメリット・デメリットを、自治体で年間1000件審査していた筆者が検証します。

②認定低炭素住宅

2014年にスタートしたで、長期優良住宅と同様に、基準を満たした住宅を認定して税の控除などを受けられる制度です。

長期優良住宅と認定の基準が違い、1次消費エネルギーの基準となっていて、大容量の太陽光発電を設置すればほぼ基準を満たすこととなります。

また、市街地の炭素排出量を減らすことを目的としているため、市街化区域外と呼ばれる農村部のでは、認定を受けることができません。

③住宅エコポイント

増税などの経済対策として、何年かに1度のペースで出てくる制度です。基準は上記2つより低く設定していて、断熱材の計算をして審査機関に提出すればポイントをもらうことができ、家電製品などに利用ができます。

昨年度も消費税10%の対策として、『次世代住宅ポイント』として行っていました。これは、省エネだけでなく、劣化基準、耐震性、バリアフリーを含めたいずれかを満たせばよかったため、エコポイントとは多少性質が違いました。

④ZEH

文頭に書いたように、1次消費エネルギーの収支をゼロにした住宅です。長期優良住宅より断熱の基準(外皮と言います)も高く、太陽光発電等により自家発電を行いエネルギーを生む必要もあります。

今後の標準的な基準になるよう国が推進している基準で、補助制度もあります。

⑤LCCM住宅

LCCMは、ライフサイクルカーボンマイナスの略です。住宅の建設から、解体するまで、できるかぎりCO2の排出量を減らし、太陽光発電などの再生可能エネルギーで自家発電することにより、住宅建設時のCO2排出量を含め、すべてのCO2排出量の収支をマイナスにする住宅のことです。

平成30年度から補助制度もありますが、まだまだ一般化されるまでには時間がかかると思います。参考程度の考え方と思っていただく程度で構いません。

詳しくは⇨⇨⇨一般社団法人日本サステナブル建築協会

太陽光発電の記事はこちら

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省エネ基準適合義務化の見送り

省エネ住宅については、さまざまな国の施策を行っていることがわかったかと思います。そうした中、予定されていた2020年からの省エネ基準適合義務化が見送られました。

適合義務化の話が出始めた2014年ごろの当初から、本当にやるのか?という意見も多くありましたが、結局見送られ、説明義務化に落ち着きました。

説明義務化と言っても、適合していない場合は、不適合ということで建築主に説明があるため、実質は適合の方向に進んでいくと思われます。

ただし、まだまだ、設計者の理解が得られていない状況だとも言えます。わからなければ私が請け負うことも可能ですが、あと1年弱の期間で設計者が相応の知識を得て、説明できるようになるかは未知数と言えます。

この適合義務化の見送りは、住宅業界にとって、怠慢であり恥だと思っています。たしかに、適合義務化はこのままでは難しいという思いは以前からありました。しかし、省エネ住宅の普及は、前述のとおりこどもたちの未来にとって、最重要課題であり急務と言えます。

建築主の負担は、省エネ住宅に住むことにより、快適性の実現と光熱費の削減を考えればデメリットは初期投資の多さだけだと思います。適合義務化が実現しなかったのは、小規模工務店や設計士の技術・知識が追い付かないことが主な要因だと思います。

日本の一般的なアルミサッシは、欧米では犬小屋でも使わないと言われるレベルです。住宅業界の方々に頑張っていただき、ZEHの基準までとは言わなくても、全ての新築住宅が長期優良住宅や認定低炭素住宅のレベルは満たしてもらえるようになればと思います。

子どもたちの未来のために住宅ができること

地球温暖化問題に対する温室効果ガスの削減において、住宅が担う役割は大変大きく、その力がなければ、日本の削減目標の達成はできず、地球温暖化を止めることはできません。

まずは、設計者の知識の向上と意識改革が必要です。建築会社を選ぶ際には、省エネルギーについてどう考えているか、ぜひしっかりと聞いてみてください。

2021年4月からは、説明義務化になりますので、どういう意識でいるかで、その会社の将来に対する考え方がみえてくると思います。

建築主にとっては、初期投資は確かに多くなりますが、光熱費の削減と生活での快適性を考えれば大きな負担ではありません。

私たちがしなければならないことは、未来のこどもたちに負担を残さないことです。

地球温暖化を止めるには、お一人お一人の意識が大変大切です。

住宅が担う重要性をご理解いただき、お住まいをどうするかご検討いただければと思います。

最後に省エネ住宅を検討している方へ

省エネ住宅の種類も説明させていただきましたが、私は、何が何でもZEHを進めたいと思っているわけではありません。

国は、ZEHにすることで、100万円以上の補助金も用意していますが、補助金をもらうにもさまざまなハードルがありますので、補助金は環境に合わせて検討して頂ければと思います。

ちなみに、私の自宅はZEHまでにはせずに長期優良住宅にしました。15kWの太陽光発電をつけたため1次エネルギー消費量の収支はゼロになっていますが、ZEHは断熱基準が高いため、ZEH基準を満たしていません。

真壁構法にしたため、断熱材が十分入れられなかったこともありますが、温暖な地域のためそこまでの基準は必要ないと判断しました。

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ZEHや長期優良住宅、LCCM住宅という考えだけでなく、あなたの住宅がどう地球環境に影響を及ぼすか考えて、建築会社と相談しながらご検討ください。

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