家の内装のイメージを決める真壁と大壁とは【それぞれのメリット】

『真壁』と『大壁』って聞いたことがありますか?

簡単に言えば、柱が出ている壁を『真壁構法(以下真壁)』、柱が見えていない壁を『大壁構法(以下大壁)』と言います。トップ画像はその概略断面図です。

現代建築では柱が見えない『大壁』がほとんどです。

でも、新築やリフォームを検討しているあなた

木の温もりがある家にしたくありませんか?

木の香りを感じることができる家が良くないですか?

この記事を読んで頂いているのならば、少なからず『真壁』に興味があり、自宅では木の温もりや香りを感じたいと思っているのではないでしょうか?

真壁と言えば、和風住宅やお寺を思い浮かべると思います。しかし、多くの部屋で畳と障子をつけるような、純然たる和風住宅は、現代ではほとんどありません

そうした中、現在では、大壁と真壁の両方を使い、フローリングの床を基本とし一部に畳を使った和洋折衷住宅が多くみられるようになりました。

※私の自宅も、1階は真壁、2階を大壁とし、一部畳の設計です。

そこで、今回は、日本の伝統技術である『真壁』の良さを理解していただくと共に、『大壁』が主流となった理由の解説をとおして、みなさんの新築計画やリフォーム計画の参考にしていただければと思います。

真壁の方が良い点

まずは、真壁のメリットです。

①木が現しになって木の温もりや香りを味わえる。

やはり、一番は木の温もりや香りを味わえることです。木を肌で感じるのは、より日本人の心身をリラックスさせる空間になります。

木材からは、フィトンチッドと呼ばれる揮発性化学物質を発散し、癒しや安らぎを与える効果があるといわれています。

また、フィトンチッドには血圧を下げたり、脈拍の乱れを少なくしたりするなどの効果もあります。

②しっくい壁や無垢床板などの自然素材との相性がバツグン

真壁にするなら壁は、自然素材との相性が大変良いです壁をしっくい壁や珪藻土など、床を無垢材とすれば、より温かみのある空間とすることが可能です。

感覚の問題もありますが、大壁のような変化のない壁に、しっくい壁や珪藻土等の塗り壁としても面白味もありません。

柱が見えることにより、壁の見た目に変化をもたらし、より映えるようになります。

③吹抜けなどで梁を見せた内装や木製家具との相性が良い

大壁の場合でも、吹抜け空間の梁(横材)を見せることはありますが、やはり真壁の方がより、魅力的な空間をつくることが可能です

大壁では、壁の中から木(梁)が突然出てくるようになってしまいますが、真壁の場合は、柱と梁がつながっているため、違和感がありません。

また、木製家具についても、当然同じ材質なので相性が良いです。

その他

・壁が柱面の内側になるため、若干面積を広くとれる
・こどもの身長を柱に書いて、家と共に成長できる
・独立柱で木登り(?)ができる

などもあげられます。

大壁の方が良い点

大壁のメリットとしては、

①見た目がすっきりしている

まず、見た目としては、真壁に比べて、すっきりしてスマートな印象となります。

これは、どのような内装を好むかなので、メリットというよりは特徴になります。

最近は、和風モダンとして、大壁でも畳を使用したデザインも増えています。すっきりした、和室も気持ちが良い空間です。

②構造的に簡単に強くできる

建物の強さとしては、大壁の方が、簡単に強い壁にできます。

真壁に関しては間に合わせて合板を加工したり、筋交いを付けたりしなければなりませんが、大壁の場合は、柱に合板や石膏ボードを打ち付けるだけで強い壁を造ることが可能です。

ただし、施工手間が簡単になるだけで、真壁が弱いというわけではありません。

③壁に厚みがあり、断熱材がより多く入る

壁に厚みがある分、断熱材をより多く入れることができ、断熱性能が上がります。

真壁では、現在注目されているZEH基準にするには外断熱にしなければならず、ハードルが上がります。

その点、大壁では、断熱材を増やすことで基準を満たすことできるため、高気密高断熱住宅にするには、大壁の方が断然有利といえます。

その他

・プレカットや工場生産に適して技術があまりいらず施工が比較的簡単
・柱が見えないため、どんな材料でも使え、建築費を安くできる
・遮音性が高い

などがあげられます。

大壁が主流になった理由

理由にはさまざまありますが、主な要因として5点あげます。

①建築費、施工費が安いから

施工の手間は、大壁の方が断然少ないです。大壁は、柱と梁を組み立てて、上から合板や石膏ボードを張り付けるだけですので、加工などの手間がいらないため、工事費を抑えられます。

だれでも施工ができ、画一的で施工にバラツキを減らすという観点からも、大壁の方が優れていると言えます。

また、木材が見えず、節が多い等品質が悪い材料でも使えるため、建築費が安く抑えられます。

②耐震性、断熱性、遮音性が高いから

安心や住みごごちという意味では、大壁の方が優れています。真壁がだめというわけではないですが、比較としては、大壁の方がほぼすべての面で性能が高いです。

③ハウスメーカーの台頭により

どうしても、利益を追求した場合、安くて簡単な施工方法が有利になります。日本は、ハウスメーカーが台頭し、住宅も工場生産になっていきました。

ツーバイフォーの住宅も増え、より生産性を求められ、大壁が普及していったと考えられます。

④施工できる大工が減ってきたから

真壁は、大工の技術に大きく左右されます。宮大工でなければ、手刻みで木材を加工して組み上げることはできない職人がほとんどです。

真壁の場合、柱を見せるため、柱1本1本の節や背割りの状況をから柱の向きを決めて、柱を加工します。真壁はまさしく大工の腕の見せ所と言えます。

それらの技術を持った大工が減ってきているのも大きな要因です。

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⑤建築主の苦情が多くなったから

真壁の場合、基本的に無垢柱(※)を使います。

※無垢柱・・・主流の集成材の柱(数センチの木を接着剤で貼り合わせた柱)に対して、木材をそのまま加工した柱

無垢柱の場合、集成材の柱と違い、品質にばらつきがあり、割れやむくれ(曲がり))が入ったりすることがあります。

実際には割れやむくれがあっても強度などの心配は基本的にありませんが、時代の流れからも苦情が多くなってきました。

それらのことから、企業としてバラツキの少ない集成材を使い、施工後は壁の中に入り見えなくなる大壁の方が苦情が少ないため、大壁が主流になっていったと言えます。

やっぱり真壁が良い理由

大壁が主流になった理由を読んで頂ければ、真壁の需要が一気に減ってきたことも理解できるのではないでしょうか?

ハスキュー
ハスキュー

では、あなたは、理由を知って、大壁にしたいですか?

判断はそれぞれですので、もちろんどちらが絶対に良いというのはありません。

ハスキュー
ハスキュー

それでも、私は『真壁派』です。

住宅は一生に一度(?)の最大の買い物です。

残りの人生の半分以上の時間を過ごすことになります。

すっきりした現代洋風建築も良いですが、工場生産でなく職人さん手造りの木をふんだんに使った、現代和風の家の方が、落ち着きませんか?

同一仕様や同じ費用の場合、大壁の方が性能が良くできるのは確かです。

しかし、真壁の性能が悪いわけではありません。たしかに性能を上げるのは手間もかかりお金がかかりますが、数十万円もかかるわけではありません。

また、真壁のための無垢柱の材料費についても、高い印象があると思いますが、最近は無垢柱の値段も、需要の低下に伴い20年前の半額以下です。

それによって、林業業界も苦境に立たされ、日本の森林がどんどん荒れ、環境破壊の原因にもなっています。

真壁の場合でも、材料費が高くなることはありません。むしろ集成材の方が高いです。

それでも真壁にする理由のまとめ

・残りの人生の半分以上の時間を過ごす空間として、木によるリラックス効果を最大限に生かすため

・日本の森林を守り、こどもたちの将来に負担をかけないため

ひと昔に比べ、安く良い材料が手に入り、材料費としては安く真壁にするには今がねらい目のため

まとめ

『真壁』と『大壁』の特徴を比較表でまとめました。

  真壁 大壁
木の材料との調和
和風建築との調和
洋風建築との調和
耐震、断熱、遮音
使い勝手
品質確保の容易性
対応できる会社数
施工費用
材料費
環境配慮

当然、それぞれの良さがあります。

私としては、是非昔ながらの職人技術が必要な真壁構法を取り入れてほしい気持ちですが、職人さんの技術が必要な構法でもありますので、信頼できる建築会社を見つけるのがが前提です。

人生の大半を過ごす住宅の判断になりますので、直感も大切にしながら慎重なご判断にお役立てください。

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