みなさん建築は好きですか?私は大好きです。
建物をたてて、まちをつくり、みんなの幸せをつくる。
本当に夢のある、やりがいのある仕事だと思います。
大学院進学 ⇨ ゼネコン ⇨ 公務員 ⇨ 民間確認審査機関出向 ⇨ 設計事務所を立ち上げ と、様々な建築業界を見てきた経験に基づき、建築業界に就職をしたい方へ、少しでも業界のアドバイスができればと思います。
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建築業界の就職先
一口に建築業界と言っても大変多くの種類の企業があり、就職先もたくさんありますが、本記事では、代表的な以下の7つについて取り上げたいと思います。(外資系企業は知識が足りないため省きました。)
①建設会社(ゼネコン、サブコン)
②ハウスメーカー(以下HM)
③設計事務所
④インフラ系企業(電力会社やJR等)
⑤他業界の企業での建築技術者
⑥公務員
⑦大学などでの研究者
では、それぞれの特徴をあげていきたいと思います。
①建設会社(ゼネコン、サブコン)
建築業界のトップランナーと言えば、やはり建設会社、いわゆるゼネコンです。年間の売り上げが1兆円を超える企業をスーパーゼネコンと呼び、建築業界を引っ張っています。私もスーパーゼネコンで5年ほど働いていました。
まずは、給料が気になるところですが、四季報2020年では、平均年収がスーパーゼネコンで平均1050万円以上とかなりの高給取りと言えます。
2010年頃は、平均年収が900万円以下だったので、10年で100万円以上も上がっています。
ただし、東京オリンピック需要が建設業界の年収を押し上げている大きな要因ですので、東京オリンピック後の景気の落ち込みが心配されるところです。コロナウィルスによる世界経済の悪化の方が心配ではありますが。
私が辞めたのは2011年の29歳の時で、年収が750万円ほどでした。38歳の現場監督の上司が1000万円にギリギリ届かないくらいでしたが、いま38歳になる同期は1000万円は軽く超えているはずです。
建設会社の建築職といっても、意匠設計、構造設計、設備設計、現場監督、技術研究所、営業など様々な業種があります。会社で出世するのは、現場監督で、社長も現場監督出身がほとんどです。
建設会社にとって、それだけ現場が会社の根幹であり、過酷であるとも言えます。働き方改革により労働環境はかなり改善されてきていると聞いていますが、それでも、建設会社は、建設業界の中で、最も忙しいのが現実だと思います。
建築業界の中で、最も大きな建物に携わることができるのも建設会社であり、それだけやりがいを感じることもできます。
どんなに忙しくても、やりがいがあって、給料がたくさんもらえる仕事をしたいなら建設会社を選ぶべきだと思います。
最後に余談ですが、私の採用試験の面接で、『笑顔をつくる仕事をしたい』と言ったところ、苦笑され、「こいつは宗教でもやっているのか」と面接後の採用協議で話題になったそうです。その後の対応が功を奏し採用試験には合格をもらいましたが、ゼネコンの社員は、そういう思いで仕事をしているわけではないと実感しました。
②HM
HMの中にもさまざまあり、木造、鉄骨造、鉄筋コンクリート造とそれぞれの特徴を持っています。また、パワービルダーと呼ばれる建売住宅や超低価格住宅を提供する企業もあります。
そもそも、HMは、日本特有の業種であり、1960年代から高度経済成長により急激に着工数が伸びていきました。そのような背景からも、建築というより利益が追及され、企業が大きくなっていったと言えます。
大学の教授の中には、『ハウスメーカーは建築会社ではない』という考えを持つ方も一定数いて、そのようなことを言われた学生も、いらっしゃるのではないでしょうか。まぁ今の時代では就職活動をする学生にそこまで言う人はそうそういないとは思いますが。
HMでは営業が最も偉く、建築職は営業職の下です。社長や役員のほとんどが営業職上がりです。HMの実力ある友人も、地方の営業所の技術系のトップになるのが目標だと言っていました。
全てとは言いませんが、大手HMに入っても、建築職では偉くはなれません。住宅を建築して稼いでいる会社なのに・・・
たまに営業の方が性に合っていて、偉くなるために営業を選ぶ人もいます。
最大手HMの設計から公務員に転職した友人が言っていたのが、『おれは機械じゃない!』と思ったことが転職のきっかけだそうです。設計と言っても、基本は営業が基本計画を行い、建築は機械的に設計を行っていくのがHMの設計の仕事になるからです。
給料としては、かなりの高級取りになります。四季報の平均年収では、大手でも800万円前後ですが、大手HMの現場監督の友人は、地方でも35歳で1000万円を超えていました。企業にもよると思いますが、就職を考えるには、実態の給料をしっかりと調べることが必要です。
残業も多いとは聞いていますが、建設会社や設計事務所ほどの残業があるとは聞いていません。
また、現場監督の場合、何カ所も現場を抱え、現場の行き来で1日が終わってしまうということも聞きます。
HMの良さは、発注者(施主)と直接接することができ、自分が設計した住宅に住む人と向き合って仕事ができることです。住んでからの感謝の言葉をいただけることが仕事のやりがいにつながります。
ただし、大手HMになればなるほど、担当する件数も増え、流れ作業になっていきます。やりがいという意味では、小規模の地域の工務店の方が、施主の近くで仕事ができ、やりがいを感じると思います。
就職となると給料に目がいきがちですが、その会社で何をしたいかを考えて検討頂ければと思います。
③設計事務所
設計事務所としては、大きな組織事務所から小さな個人事務所があります。
組織事務所は、大規模建築物の設計が中心となり、建築業界の中のエリート集団とも言えます。私は、ゼネコンの設計部にいましたが、設計事務所はゼネコンの設計部とは違い、自社で施工をするわけではありません。そのため、現場を知らず上から目線になりがちなところがありますが、デザインには最も自信を持っていると言えます。
大きな建物の設計をしたければ、組織設計事務所に入るのが近道でありますが、それだけ人気も高く、ハードルも高い就職先です。
また、著名な建築家の事務所に就職するのも大規模建築を設計できる良い方法です。私の公務員時代に今をときめく某著名建築家事務所の方から建築相談を受けましたが、やはり優秀な方ばかりの印象でした。
事務所員は、100人以上抱え、個別の設計はそれぞれに任せられ、最終的な判断を著名建築家がします。独立を目指すには最も良い道だと思います。
小さな個人事務所は、入るのはそれほど難しくありませんが、激務とは給料の安さは覚悟しなければなりません。
給料は、10万円もらえれば良い方という事務所も多くあります。事務所を継ぐということもあり得ますが、基本的には、独立する気持ちがなければ就職するのはおすすめできません。
大学に入った当初は、建築家になってカッコいい建物を設計したい。という方がほとんどだったと思います。しかし、大学で学ぶうちに現実を知り、設計から離れていく人が多くいます。
なぜ、自分は建築を選んだのか。建築で何をしたいのか。今、それを最も悩まなければいけないときだと思います。その答えをしっかり持って、設計事務所への就職をご検討ください。
④インフラ系企業
インフラ系企業で代表的なのが、電力会社やガス会社、鉄道関係です。就職としては、枠が狭く偏差値が高い大学ほど人気があります。
建築関係では、最もバランスの良い業種かと思います。ただし、建物の設計より現場の監理や保守点検業務が中心になります。電力会社では、原子力発電所に配属されることも多く、福島第一原発でも多くのの建築士がいまでも対応しています。
企業も、設計は設計事務所に依頼することも多く、設計の実務はあまりできないと言えます。設計監理など、チェックする技術を身に着けて企業に貢献します。
給料としては、大手インフラ企業なら安定した高給が期待できます。大手電力会社の四季報の情報では平均年収800万円程度ですが、電力会社の知り合いに聞く限り、実際はもっともらっています。
40歳1000万円は、限られた人かと思いますが、多くののインフラ系企業で将来的には1000万円はもらうと思います。
建築の仕事が存分にできるわけではありませんが、いちサラリーマンとして一生その会社で働くなら、良い暮らし、安定した人生が送れるのではないでしょうか。
ただし、もしも独立や転職をしたいと思った時には、最もつぶしが効かない就職先とも言えますので、その点は就職を決める際には気に留めておく必要があります。
⑤他業界の企業での建築技術者
例えば、自動車メーカーや商社でも建築技術者を採用しています。ただし、枠は最も狭いと言って良いでしょう。
大学の先輩で、日本でトップの自動車メーカーに就職された方がいましたが、就職試験では、何も言われていないのにすべての人が、ポートフォリオなどの自己アピールする資料を持ってきていたと言っていました。
もう10年以上も前なので、現在の就職活動はわかりませんが、日本のトップ級の大学の精鋭たちを押しのけて入社するのはかなりハードルが高いと言えます。
限られた優秀な人材の就職先になると思いますが、建築技術者というより、いち企業人として、建築の知識を活かしながら実力を発揮していく世界だと思います。
⑥公務員
公務員の仕事については、詳しくは👇で書いています。
公務員と言っても、国家公務員、都道府県、市町村で仕事内容も大きく変わります。
国家公務員や都道府県の職員になるほど、統括する仕事が増え、建築技術からは離れていきます。
建物の設計はほとんどありませんが、個別の建物よりまち全体の計画をつくりたいという考えがあれば公務員も良いと思います。
ただし、国家公務員Ⅰ種の場合は別ですが、地方公務員は、30歳以下ならいつでも公務員になれます。公務員を目指すとしても、まずは民間企業に就職するべきです。それが自分の成長にもつながるし、国民、市民のためになります。
公務員をこころざすなら、様々な経験と知識をもったスーパー公務員を目指しましょう。
また、公務員に近いものとして、民間確認審査機関があります。私も1年間出向していましたが、公務員を退職した社員が多くを占め、役所に近い企業になります。
新卒で入る人もいますが、やはり経験が必要な職種ですので、目指すとしても民間企業を経験されてからが良いでしょう。図面を描くことより、チェックが性に合っていると思う人に最適な職業です。
⑦大学などでの研究者
建築業界の中でも研究者の道があります。基本的に大学院博士課程を修了することが前提となりますが、大学生にとってはある意味もっとも身近なのかもしれません。
ただし、就職先となると枠が少ないため、ちょうど空きがでなければ露頭に迷う可能性もあります。
正規の就職ができ、大学教授になれればかなりの給料が期待できますが、実力と運が必要とされます。
国立大学教授なら1000万円は軽くもらえ、ある有名私立大学の建築学会長もした教授は1億円の収入があるともききました。
お金のために研究者になる人は少ないと思いますが、安易に就職先として選ぶ業種ではありません。
就職試験に向けてアドバイス
就職試験に合格する秘訣は、当たり前ですが、その企業を知ることとどれだけ自己アピールできるかです。
私は、ちょうど就職氷河期が明けた年の2006年に新卒で就職しました。いまより、就職先の門戸は狭かったと思いますが、地方大学でも、倍率10倍以上の第一希望のスーパーゼネコンの設計部に入ることができました。
「なぜ当社を希望したのですか?」と聞かれても、ライバル企業との違いをはっきりと言えない学生がほとんどです。
正直、学生には酷な質問だと思います。建設業界はどこも同じようなことをやっていて違いを説明することは難しいです。それでも必ずされる質問ですので、インターネットでとことん調べてください。
このブログにたどり着いて、ここまで読んでくれたということは、よっぽど真剣に調べているのだと思いますので、その力があれば心配することはありません。
あとは、やはり自己アピールです。
これが最もお伝えしたいことですが、会社から求められなくても、自己アピールの資料を作って持っていくことをおすすめします。最も良いのは、自分のアピールポイントをまとめたリーフレットです。
リーフレットとは、A4用紙1枚にまとめた資料で、政治家が選挙の際に自己アピール手法として必ず使います。
それまでの経験、研究テーマ、考えなどをA4用紙1枚両面にまとめ、三つ折りにして懐に忍ばせ、状況を見ながら面接官に渡すのが最も効果的な手法です。
就職試験に臨むのにあたって、頭を整理するという意味でも効果的ですので、是非やってみてください。
私のできるアドバイスは、何でもしますのでお問い合わせまでお気軽にどうぞ!
まとめ
建築業界を目指す方へ建築業界の実態を説明させていただきました。
ただし、大学で建築を学んだからと言って、建築業界に入らなければいけないなんてことは一切ありません。
建築業界の実態を考えて他業界に入るのも正解です。
さまざまな種類がある建築業界ですが、給料、やりがい、企業体質などを踏まえて自分に最も合った会社を探してください。
建築職は技術職のなので、転職も独立もしやすい業種です。ただし、新卒でなければ入りにくい企業や組織があるのも事実です。
最後までお読みくださった方の就職活動が成功を収められるよう心よりお祈りいたします。